やっぱりどうも、お貴族様の『仕来たり』は苦手だ。

何時もであれば皆の準備の遅さにも耐えられるものの、この環境であれば別だ。
何もすることが無くて退屈になってしまう。



気分転換に中庭の方へ出てみると、見慣れた顔の重騎士が其処に居た。


「ガトリー」
「おっ、アイクじゃないか。調子はどうだ?」
「別に普通だ。ところで…あんたは何をしてるんだ?」
「あぁ、おれは『花』を愛でていたんだ」
「…確かに、そこらじゅうに咲いてるな」
「違う違う。その花じゃなくてあっちの『花』だって、ほら」


奴が指差す先を見ると、其処には廊下で談話に華を咲かせる何人かの『侍女』しかおらず、花なんか何処にも無い。
その事を言ったら、奴は妙に生き生きした表情でこう答えた。


「それそれ!やっぱり宮仕えの娘達は違うよな〜」
「………」


そういう事だったのか。
改めて彼女等を眺めてみたが、特に他の女どもと違ったところは見当たらない。
…それよりだったら、まだあいつの方が良いと思うが。

そんな事を考えている自分をよそに、奴は未だ『侍女』達へ想いを馳せる。


「なんか気品があるってのかなぁ?普通の娘とはまた違った魅力があるよな!」
「…俺には全然分からんが」
「なぁ、アイク。お前はどの娘が好みだ?おれはあの栗毛のカワイコちゃんが…」
「セネリオの方が可愛いと思う」
「え…!?」
「それじゃあな、ガトリー」
「え、ちょっ…ちょっと待て!アイク!!」


…今、何て言った?
もしかして、思わず心の中の事を口にしてしまった?


それだったら後ろから聞こえる、やけに騒がしい声にも納得できる。
まぁ、特に気にする必要も無いか。
別に困る事でも無いし。


今のやりとりで十分頭を冷やす事が出来たので、皆が集まる会議室へと向かった。




アイク×セネリオ風味。
蒼炎14章拠点会話ネタ。


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