パパと私と携帯電話



ニッキーが携帯を睨み続けてから数時間。
一向に着信ランプが光る気配は無い。

「確かに機械使えそうには見えないけどさ!」

そう呟いて、自室のソファーに携帯を投げ付けた。

その頃、某喫茶店では。

「ええい!また終話ボタンを押してしまった!!」
「頑張ってパパ、3時間で漢字変換が出来る様になっただけでも進歩だわ!」
「ありがとう、ミク…!」
「でも、助手さんには申し訳無いね…」
「…確かに」
「もう1回電話した方が良いよ!」
「ミクがそう言うのなら」

愛娘に言われて、鴨川は公衆電話へと走って行った。

そもそも何故この状況になったというと…

およそ半日前、鴨川は娘のミクに連れられ、ド●モショップへと行った。
目的はひとつ、携帯電話を買うためだ。
彼を知る者ならば「有り得ない」というだろうが、娘とメールする為と言われれば納得するであろう。

そんなこんなで最新型の携帯を買った鴨川だが、ここである問題が発生した。

鴨川は機械が全く扱えないのである。

それでは目的が果たせないと、近くの喫茶店でメールの練習を始めた鴨川。
コーチは勿論ミクだ。

「携帯電話を買ったのだが、試しにメールを送ってみたいので、君のメールアドレスとやらを教えたまえ」

そうニッキーに電話してから数時間が経っても、未だにメールを送れずにいたのだ。

その鴨川はというと、緑の受話器に向かって、どこか一生懸命に喋っている。
ミクはその様子を、ミルクティーを飲みながら窓越しに見つめていた。

「ママにもああしてれば、まだ一緒に住めたのにな」

27も歳が離れた父親に、人気絶頂のアイドルは穏やかな表情を向けた。




現代文の授業で『藤野先生』という小説を読んだ後、勢いで描いたもの。
鴨川は超ド級の機械音痴だと良い。



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