魔法のお菓子



ある秋の日の放課後。
ナカジは借りていた本を返却する為に、学校の図書室に来ていた。
今日は運悪くひとり…早急に用件を済まし、あの人が待っているいつもの公園に向かいたい所だ。
しかしそれは叶わぬ夢だった様だ。

「ナカジマく〜ん!こっちへいらっしゃい」

その原因―史書のアルフォンス・ミシェルがナカジの名を呼んだ。
ナカジはなかば諦めた様な表情で、ミシェルの待つ史書室へと入っていく。

「そんなに嫌そうな表情をしないで下さい。お菓子とミルクティーもありますよ?」
「紅茶は好かん」
「僕の愛がたっぷり詰まってますから、きっと美味しいですよ」

お前のそういう所が嫌なんだよ、心の中でそう呟きながら、ナカジは史書室の柔らかなソファーに座った。
高そうなクッキーをぶぉりぶぉり貧り喰うナカジを、微笑ましそうに見つめるミシェルの瞳。
浮き世離れした美しさのそれは、まるで人間ではない存在かの様でナカジは苦手だった。

「…っ!」
「おや、もう効いてきましたか」
「何の話だ…身体が異様に熱いぞ…!」
「そりゃあそうでしょう。コレは魔法のクッキーですから」
「…はぁ?」
「相変わらずキミには冗談が通じませんね。このクッキーの生地には、ホレグスリが練り込んであるんです」
「惚れ薬!?」

ミシェルは返事の代わりにふわりと微笑み、ナカジのマフラーを外す。
恐らく薬の効果だろう―拒みたいのに手に力が入らない。
助けを呼ぼうと必死で叫ぶが、気の抜けた声ばかり出てしまう。
その様子を見て、ミシェルは喜ぶ。
全くもって悪循環だ…ナカジは眉間に深く皺を寄せた。

「貴様…何のつもりで…」
「そんな野暮な事、わざわざ聞かないで下さいよ。敢えて答えるとしたら…ナカジマくん、僕の好みなんですよ」
「ふざけ…な」
「僕は至って真面目です」
「この変態…!」
「ああ、煩いですね。いっそ塞いでしまいましょうか」

そう言うと、ミシェルは自分とナカジの眼鏡を取り払い、そのまま塞ぐかの様に唇を重ねた。
何度も何度も角度を変えた、絡み付く様なディープキス。
侵入してくる舌と隙間から漏れる自分の声に嫌気が差し、ナカジは涙を流した。
生理的嫌悪の涙を。

「ん…っふ…う、がはあっ!!」
「良い表情ですね。実にそそられます」
「ミシェ、やめ…も…いやだ…」
「本当はココで止めるつもりでしたが、キミがあんまり可愛いので、最後まですることにしました」
「この…っ!」
「…さて。魔法が切れてしまう前に、お姫様をバラの園へと案内しましょうか」
「…っ!」

ミシェルはナカジをソファーに押し倒し、もう一度くちづけをした。
禁断の花園へと向かう馬車が止まらない様に、深く深く―




ナカヒグを書こうとして、別の方向に行ってしまった悪例。
コレを描いた当時、まだミシェルさんを見た事がありませんでした。



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