日常の中の非日常



ある日曜日。
部活が休みだったショウは、ソラの部屋でくつろいでいた。
ソラはベッドに寄りかかり、ショウはそのベッドの上に寝転がる。
幼馴染みである彼等にとって、ごく日常的な状況。
しかしショウはそれに満足していなかった。

せっかく好きな人と2人きりだというのに、会話ひとつ無いのは寂しすぎる。
かといって天文関係の雑誌に読み耽るソラを、遮る話題も勇気も無い。

何もする事の無いショウは、その辺に置いてあったクッションに顔を埋めた。
それからはソラのにおいがふんわりと伝わってきて、寂しさが増幅する。
段々頭の中がぼんやりとしてきて、ショウは虚ろな様子で口を開いた。

「…ねえ、ソラ兄」
「ん?」
「ソラ兄って、キスした事ある?」
「えっ」

ショウの質問にソラは顔を赤く染め、そのまま硬直した。
その反応を見て、ショウは正気に戻った。

最悪だ。
いくら無意識だったとはいえ、いやらしいにも程がある。

ショウは気まずくなって、先程のクッションに再び顔を埋めた。

「ショウ」
「……」
「ショウってば」
「……」
「さっきの質問の事なんだけど」
「あれはもう、忘れてよ」
「そんなの無理。ちゃんと答えさせて」
「やだ!聞きたくない!!」

ソラもベッドの上に乗ってショウに話しかけるが、完全な否定態勢。
それを見て苛立ちを感じたソラは、ショウの小さな身体をクッションから引き剥がした。
そして両手で顔を挟み、正面を向かせる。

「僕の目を見て、顔を見て」
「…はい」
「ショウは覚えてないかも知れないけど、僕のファーストキスはショウなんだよ」
「ウソだ」
「本当。今でもはっきり覚えてる―僕が8歳で、ショウが5歳だった頃」
「あ!」
「思い出した?」
「うん。一緒におやつを食べてる時だった…」
「それで、オ●ラミンCのフタで作った指輪を僕の左薬指にはめて、『大人になったらケッコンしようね』って言ってくれた」
「あの時は…ゴメン」

そうそれは、ショウがソラの事を好きになったばかりの話。
恥ずかしい過去を思いだし、ショウはその場でうなだれた。
しかしソラが再び顔を上げさせる。

「ねえ、ショウ。あの時の約束って、まだ有効?」
「え」

ショウが驚きで目を見開くと、ソラの顔が接近距離にあった。
擦る様な、無器用なキス。
唇が離れた瞬間、2人は揃って赤面していた。

「…ソラ兄。質問の答え、聞かせてよ」
「僕がキスしたいのはショウだけだよ。今までも、これからも」
「そんな可愛い事言うと、犯すよ?」
「良いよ。だってショウだもん」
「泣いたって叫んだって、絶対にやめてやんないからね」

ショウとソラは互いに不敵な笑みを向け、今度は深い口付けを交した。
スプリングの効きがいまひとつなベッドが、ギシギシと軋む音が響いた。




リクエストの翔空。
オ●ラミンCのフタ部分で、指輪を作って遊んだのは俺だけですか?



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