血に染まるカーペット



タローは近所のTSU●AYAでDVDを借りてきた。

今日は金曜日。男友達2人が泊まりにやってくる。
となれば、やる事は決まっている。


―ピンポーン


遠くからチャイムの音が響いた。
どうやら待ち人達が来たようだ。


―ピポピポピポーン!


タローが自室から出ようとすると、待ちきれないとばかりにチャイムが鳴らされる。
短気な友人がボタンを連打している姿が思い浮かんだ。


「ハイハーイ、今行く!」


その場で思いっきり叫び、急いで階段を駆け降りて玄関へと向かった。
扉を開けると、暑苦しい格好をした眼鏡と試合帰りのバスケ少年が立っていた。
タローは彼等を満面の笑みで迎える。


「ナカジ、ショウちゃん…ようこそ我が家へ!」
「本当に飯を食わせてくれるんだろうな?」
「もちのろん!風呂に夜食もつけるぜ」
「タロちゃん、俺達本当に泊まって良いの?家の人に迷惑なんじゃあ…」
「ショウちゃん、気ぃ遣わなくても良いの良いの!今日は両親出かけてるから、遠慮しないの!…さぁ、中に入って」


その言葉を聞くやいなや、ナカジとショウは家の中へ滑り込んだ。
タローはため息をつきながらも、玄関の扉を閉めた。



夕飯を食べて全員風呂に入り終わった後、少年達はタローの部屋に集まってだべっていた。


菓子やつまみを食い散らかしながら、くだらない話をして騒ぐ。
発売されたばかりのゲームを、代わり代わりにプレイする。

そんな事をしているうちに、時計の針が11時を指していた。
するとタローが突然立ち上がる。
客人達はそんな屋主を不思議そうに見つめた。


「フフフ…お前達、本日のメインイベントの開催だぁ!!」
「た、タロちゃん?どうしたの急に」
「気味が悪い…」
「文句ならこれを見てから言うが良い…ジャジャーン!」
「「はあぁっ!?」」


誇らしげな表情でタローが取り出したのは、借りてきたばかりの数本のDVDだった。
それらを友人達の目の前に差し出し、タイトルを朗読させる。


「『ドキドキ☆2射面談』『体育館倉庫の死角』?」
「『女教師の誘惑』『射in会活動』…ってコレはまさか」
「そのまさか。AVナリ〜☆」
「どうでも良いが、何で学園モノばかりなんだ?」
「タロちゃんの趣味じゃない?」
「う、うるさ〜い!とにかく、早く見ようぜっ♪」


タローは1本目のDVDをプレイヤーに挿入し、再生ボタンを押した。



テレビ画面には、男子生徒の局部をしゃぶる女教師が映る。
それに釘付けになっているタロー。


ふと後ろの友人達の様子を見てみた。

2人とも全くもって無関心だ。
ナカジはせっせと眼鏡を拭き、ショウはどこからか出したバスケットボールを指先で回している。


その様子に納得のいかないタローは、2人に掴みかかった。


「お前等ああぁぁっ!思春期盛りの青少年が、淫らな女の姿を見て反応ナシとはいかがなモノだあぁっ!」
「煩い。近所迷惑だ」
「う〜ん…別に興味が無い訳じゃないんだけど、どうもピンと来ないっていうか…」
「くそぅ…このムッツリどもがっ」
「年中発情期のお前よりはマシだと思うけどな」
「きいいいぃっっ!!」


ナカジの嫌味にカチンと来たタローは、奴をぎゃふんと言わせる案を絞り出そうとした。
タローが暫く頭を悩ませていると、画面に映る女教師が目に入った―これだ!


「ねぇねぇナカジ」
「何だよ」
「あの女教師、何となくヒグラシさんに似てない?」
「…なっ!?」


タローが指したのは、先程から男子生徒の局部をしゃぶる女教師―眼鏡をかけたショートカットの女優だった。
今まで映像に目も向けてなかったナカジは、改めて女優を見てみる。


(全然似てない、つかヒグラシさんの方が可愛いし…だがもしヒグラシさんが、アレと同じ事をしてくれたら…)


ナカジの妄想はどんどん膨れ上がり、ついにゲージを振り切った。


「なっ、ナカジくん!?」
「ナカジ!?」
「おいタロー…ティッシュよこせ」


ナカジの両方の鼻穴から、大量の鼻血が溢れだした。
その鼻血で、タローの部屋の真っ白なカーペットが赤く染まる。


「おいナカジ…マジ大丈夫かよ?」
「…悪い。俺、やっぱ帰るわ」
「へ?」
「何か急に、ヒグラシさんに会いたくなってきた」
「あの…タロちゃん、実は俺も…」
「ショウちゃん?」
「俺もアレ、もしソラ兄だったらって考えちゃって…そしたら本物に会いたくなってきちゃった」
「という事だ。タロー、夕飯と風呂、ご馳走さん」
「それじゃあタロちゃん、おやすみっ」
「ちょっ…2人とも落ち着けって…おい!」


タローの制止も虚しく、サカった友人2人は荷物を持って部屋から出ていった。
独り残されたタローはというと、何とも言えない気持ちになりながらも、DVDの続きを観賞していた。




ナカジとタローとショウ。
純粋なファンの方はスミマセン。



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