練習が始まる前のスタジオ。

集まっているのは、今のところ悠斗と潤だけ。
居心地が悪そうにその場に留まる潤に対し、悠斗はその辺の紙に落書きをしている。
しかしそれに飽きたのか、悠斗は潤の方に目をやる。
潤の身体が、僅かに固まった。

「何?津田くん」
「潤ちゃんってさあ、可愛いよね」
「なっ!?」
「しかも眼鏡っ娘で巨乳でって、こりゃ絶対モテるって。10万は軽く稼げるんじゃね?」
「…何の話?」
「もし潤ちゃんにその気があったらさ、良いカモ紹介しよっか?」
「カモ?」
「一緒に居るだけでお金くれるおじさんの事。しかも、一発ヤるだけで倍額だぜ?」
「それって、まるで援交じゃない」
「そ、それ」
「…そんなのやだ。売春なんてやんない」
「残念。悪い話じゃないんだけどな」

軽くおどける悠斗に、潤は背を向けた。
溢れそうな涙を堪えながら。

それに気付かない悠斗は、更に話を続ける。

「本当に無かった事にする?この話」
「やだって言ってるじゃん…しつこい」
「ふぅん、惜しいなあ。潤ちゃんなら、リピーター出来そうなのに」
「リピーター?」
「潤ちゃん感度良さそうだし、地味な子って人気高いからさ」
「っ…!」

堪えきれなくなった潤は、悠斗の頬を打った。
その衝撃で、彼女の瞳から雫が垂れる。
手に熱が帯びる。
胸の奥からも、熱いものが込み上げてくる。

「馬鹿、最低っ!!」

潤はそう言い残し、その場から走り去る。
そんな彼女の姿を、悠斗はぼうっと見つめていた。
未だ痛みの残る、頬をさすりながら。



─どんっ

何かが身体にぶつかった様な気がする。
直が視線を落とすと、潤が床で尻餅をついていた。
しかも、大粒の涙を溢しながら。

「す、すまん潤ちゃん!大丈夫か?」
「…平気、です」
「ホンマに平気やの?相当痛かったみたいやし…」
「あの、本当に平気です。それほど痛くないし、それにぶつかったのは私ですし」
「でも潤ちゃん、泣いてしまってるやんか」
「ええと、これは別事情で…ナオさんのせいじゃないですから」
「別事情?」
「…何でもないんです、失礼します!」

深く突っ込まれそうになった途端、潤は慌てて逃げ去ろうとした。
しかし直はそんな彼女の手を掴み、引き止める。

「何でもない訳あらへんやろ?」
「本当に何でもなっ…んぐっ」
「俺に何か出来る事があるかも知れへんし、話してみいひんか?」
「なお、さん…私、私…っく」
「うん?」

それから十数分かけ、潤は事情を話した。
涙を流しながら、悠斗の言葉をそのまま吐き出す。
それを飲み込む度、直の表情は厳しくなっていった。

「…ごめんなあ、潤ちゃん」
「なんで、ナオさんが謝るんですか?」
「それは、ええと…なんとなく」
「そうですか。あの、先に戻っててください。私も少ししたら戻りますから」
「そか。無理しなくても、今日は帰っても良えんよ?」
「大丈夫です。話を聞いて下さって…ありがとう、ございました」
「……」

潤はああお礼を言っていたが、直は納得出来ずにいた。

彼の中で渦巻くのは、困惑と怒り。
今すぐ悠斗を問い詰めないと気が済まない。
そんな思考で身体が支配される。

そうして、直は悠斗の許へと向かった。



がちゃり

スタジオの扉が開いた。
入り口に立っていたのは直。
いつもなら笑って迎えられるのに。

でも今日はそれが出来なくて、悠斗は黙っていた。

「津田くん」

直がつかつかと歩み寄ってくる。
声色から彼が怒っているのが分かる─悠斗は密かに身を震わせた。

「津田くん、何で潤ちゃん泣かせた?」
「…知らねえ」
「知らないわけ無いやろ?ちゃんと理由話してみい」
「マジで、知らねえし。変な事言わないでよ」
「ホンマに、知らへんのか?」
「……っ」

居心地わるげに顔をそらした悠斗に、直は声を低めて言う。

「津田くん。こっち見ぃ」

ぴくりとその声に反応し、恐る恐るという感じに視線だけをこちらに向ける悠斗。
その目をじぃっと見つめ、直は問い詰める。

「あんな酷いこと言うて、知らないって言うんか?」

それに悠斗はキッと睨み返してきた。

「…俺、悪くないもん」

そういって憮然とした表情で黙りこくってしまった。

「悪くないって、悪いに決まっとるやん!あんな傷付けておいて…」
「今突き放さないと、もっと傷付ける事になる」

直の発言を遮るように発せられた言葉は、妙に重みがあった。
が、直には理解出来なかった。

「どゆこと…?」

疑問に思って聞くと、悠斗の表情が陰り俯いてしまう。
まただんまりしてしまった。

「…津田くん?何も言うてくれへんかったら、分からないやん」

困ったように呟くと悠斗はひどく寂しげな表情でぽつりと零す。

「……俺みたいな最低な奴好きになっても、傷付くだけだから。幸せになんて、してあげられないから…」

その表情と言葉に胸が締め付けられた。
直は言葉を無くす。
しばしの間、空間を静寂が満たした。

「なんで、なんでそんな事言うん?そんな風に自分の事卑下しちゃアカンって」

絞り出した言葉に悠斗は困ったように笑う。

「なおサンは本当の俺を知らないから。俺は…」

今度は直が悠斗の言葉を遮った。

「あー知らん」
「へ…?」

呆気にとられる悠斗の目を真っすぐ見つめて直は言う。

「津田くん、全然自分の事話してくれへんもん。それで分かるわけ無いやろ?」
「う…」
「俺は津田くんの事知りたい。そんで、ちゃんと理解してあげたいんよ」

優しく言われてなんとなく気恥ずかしくなった悠斗は、直から視線を外し、ぽつりと呟いた。

「…た…てる」

あまりに小さい呟きが聞き取れず直は聞き返す。

「潤ちゃんには、悪い事したって…思ってる」

今度ははっきりと言い切った。
それを聞き、直は優しく微笑んだ。

「じゃあ一緒にごめんなさい言いに行こ」
「え…」

戸惑う悠斗の手を引き直は歩き出す。

「一緒に行ってあげるから。な?」
「…ぅ、うん…」

不思議と嫌な感じはしなかった。
その少し大きい手から伝わる温もりに、心まで温められてしまったように思えて…悠斗は心の奥底に芽生えた奇妙な感情に戸惑うのだった。

出会って間もない時の様に。


この話はオチが最初に浮かんだんだよね?
オチから始まった(笑)
アナタが書いたんでしょオチ!
そうだっけ?
そうですよ。居心地わるげに〜以降は、句読点とか変換以外は殆ど無修正ですから。イエイ★
そう言えば書いた気がする。途中で文の感じが変わる謎が解けたね☆
ヤッタネ!しかし俺等ナオくんつっくん好きだねw
ほんとほっときゃこの二人☆
妄想してていっちゃん楽しいもん(笑)
これはしょうがないねwでも他の方の出演も考えねばなあ。
ですね。主にノーマル(笑)
ノーマルは君に任せた!君に決めた!
ぴっかー★



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